老後に必要なお金がざっくり分かれば、不安も和らぐ

節約

 

「老後の生活に2,000万円が必要」とまとめられた金融庁の報告書が公表されてから、「自分の老後は大丈夫だろうか」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで「年収600万円の会社員」をモデルに、どのように老後のお金に備えていけばいいのか、シミュレーションしていきましょう。
【モデルケース】

会社員(45歳)、年収600万円
家族:妻(43歳・パート)、子ども(高校生)

補足:
・住宅ローン返済中
・妻のパートは扶養内

老後に必要なお金がざっくり分かれば、不安も和らぐ

現在45歳の会社員で子どもが1人(高校生)。妻は夫の扶養内でパート、住宅ローン返済中とのことですね。
老後に漠然と不安をいだいている方の多くは、必要な金額を一度も見積もったことがないケースがほとんどです。老後に必要なお金がざっくり分かれば「老後資金作り」という明確な目的ができ、一歩が踏み出せるはずです。

カギとなる年齢は「65歳」

今後の生活設計を考える上で、年齢的に重要な節目が「65歳」です。65歳といえば現行制度で公的年金が受給開始できる年齢です(繰上げれば60歳から可能)。国がモデルとしている年金額は月額22万円程度。公的年金だけでは生活費を十分賄うことは困難ですが、退職後の生活の柱になることに変わりはありません。
そこで「65歳」をターゲットとして今から65歳、そして65歳以降に分けて生活設計や収支計画を立てるとよいでしょう。
最初のアクションは65歳から公的年金がいくら受給できるのかを確認することです。現在45歳ですので「ねんきん定期便」に記載されている年金額は、これまで支払ってきた年金保険料をベースにした試算額です。
そこで活用してもらいたいのが「ねんきんネット」です。60歳まで現在と同条件で保険料を払い続けた場合を含め、60歳以降も働くケースや65歳以降に年金を繰下げて受給したケースなど細かな条件を設定し試算することができます。実際の受取額により近い金額を知ることができるのです。

「老後に必要なお金」をシミュレーションする

支出については、実際どのような生活を送りたいかにより大きく異なりますが、65歳以上の平均的な生活費を用いて老後の支出をシミュレーションしてみましょう。
夫65歳・妻60歳以上の夫婦のみで無職世帯の月平均支出は約24万円です(総務省「家計調査報告2019年」)。90歳まで生存すると仮定すると7,200万円かかる計算です。
このほか特別な支出として家のリフォーム300万円、耐久消費財300万円、レジャー費600万円、医療と介護費用を合わせて1,000万円と仮定して見積ると基本生活費とトータルして9,400万円必要となります。
この金額を65歳時点の貯蓄と65歳以降受け取れる公的年金でカバーしていくことになります。
年収600万円のモデルケースでは可処分所得は480万円(月額40万円)程度です。妻のパート収入もありますし、65歳までにはまだ20年あります。計画を立て実行に移せば不安も徐々に解消されることでしょう。

収支を改善し老後資金に回す

老後資金準備のためには収支を改善してお金を先送りしなければなりません。改善のポイントは、①収入を増やす、②支出を削る、③資金の運用をする、の3つが基本です。
収入については、転職等で即時に年収アップをさせる方法も考えられますが、いつまで収入を確保するか(できるか)がポイントです。60歳まで働くのか、あるいは65歳、70歳まで働くのか、働く期間に応じて生活状況はかなり変わります。
60歳で退職し、再雇用・再就職し公的年金が受給できる65歳になるまで働くケースが増えています。厚生年金は70歳まで加入できるので、60歳以降も再雇用や再就職で保険料を払うことで将来の年金額を増やすことができます。
またパートの奥様が厚生年金に加入する方法も考えられます。夫の扶養から外れると保険料の負担が発生しますが、国民年金に加えて厚生年金が受け取れ、将来の年金額を増やすことができます。
将来の話ですが公的年金については65歳から受給せずに繰下げることで、年金額を増やすことができます。65歳時の年金額が月額20万円だとすると、5年待って70歳から受取を開始すると28.4万円になります(42%アップ、税金は考慮せず)。
65歳以降も職が確保でき、収入があれば繰下げも現実味がでてきます。公的年金は「終身で受け取れる保険」なので長生きのリスクを考えるととても重要な選択になります(2020年3月には「繰下げ受給の上限年齢を現行70歳から75歳に引き上げる」ことを盛り込んだ年金改正法案も提出されています)。

老後のために今すぐできることは

支出については、一般的に加入中の生命保険、通信費や外食費などが見直しのターゲットです。特に生命保険は子どもの成長とともに必要な保障額は減少しているはずです。保険金を削減したり、払済みにして保険料を減らし、その分、将来のためのお金に回しましょう。
医療保険も当たり前のように加入しているご家庭が多いですが、日本の公的医療保険制度、特に高額療養費制度によって自己負担分はかなり限定されます。
例えば年収600万円の場合、1カ月(歴月)に100万円の医療費がかかったとしても自己負担は9万円弱で済みます。長期間保険料を払い続けるよりは貯蓄で備えたほうが合理的かもしれません。

資金運用は積立貯蓄でコツコツと

今はまだ教育費負担や住宅ローンの返済がありますが、少額でもいいので積立貯蓄を始めましょう。特に子どもの教育費が終わる50歳代はお金を貯めるラストチャンスです。
65歳になるまでには20年あるので具体的にはiDeCo(イデコ)やつみたてNISA(ニーサ)など税制優遇のある制度を利用して、コストの低い投資信託で長期運用していくことをお勧めします。

出典:All About NEWS 2020.03.31

この記事を執筆したのは……

永田 忠則

株式会社MILIZE所属の1級ファイナンシャル・プランニング技能士 、CFP®(日本FP協会認定)、DCアドバイザー、企業年金管理士(確定拠出年金)、社会福祉士等。

 

年収400万円、30歳。厚生年金保険料を払うのは損?

学生の頃のアルバイトと違い、たくさんもらえると思っていた社会人の給料。いざ貰ってみるととても少ない。給与明細を見ると、厚生年金の保険料がかなり天引きされている……。「貰えるか分からない年金のためにこんなに払うのか」こう感じた方は結構いらっしゃると思います。
でも年金は老後のためだけじゃないのです。別の用途で年金に助けられるかもしれません。
そこで「年収400万円の会社員」をモデルに、どんな時に年金によって助けられるのか、シミュレーションしていきましょう。

【モデルケース】
会社員(男性、30歳)
年収400万円(内ボーナス40万円)
標準報酬月額:30万円
標準賞与額:20万円×2
厚生年金保険料:36.3万円/年額

家族:妻(30歳、専業主婦)、長男(2歳)、長女(0歳)

年金の給付は3種類

老齢給付 … もっとも一般的にイメージする老後にもらえる年金。

障害給付 … 体に障害が残った場合にもらえる。

遺族給付 … 亡くなった場合に遺族がもらえる。

「年金が減る! 貰えない!」とよく言われるのが、1つ目の老齢給付です。
確かに少子高齢化に伴い、支給開始年齢の引き上げや支給金額の減額が今後予想されます。
しかしながら、年金の保険料を払うのは損だ、という判断をするには早計です。年金には障害給付・遺族給付という機能もあるのです。

障害給付って何?

障害基礎年金と障害厚生年金は、会社員で厚生年金保険料を支払っていれば、支給要件に差はあるものの、どちらも受け取る対象になります。

 

障害給付はいくらもらえるのか、実際にシミュレーションしてみましょう。
▼シミュレーション1:障害給付はいくらもらえる?

先ほどの男性の体に、障害等級2級の障害が残ってしまったら、いくら障害給付が受給できるのか試算してみましょう。

シミュレーション期間は30歳男性の平均余命が51.88年なので、世帯主が81歳までです(出典:厚生労働省平成30年簡易生命表の概況)。

このようなグラフができ上がりました。
子どもが高校を卒業するまでの間は、障害基礎年金に子の加算がされるため、少し段差がついていますね。
合計7,000万円弱が支給される計算になりました。

若い頃から受給となった場合、長期間受給することになるので、若い頃から保険料をしっかり納めていると安定した保障が受けられそうですね。

また、長期間保険料を納めることで障害厚生年金の金額が増え、さらに保障が手厚くなりますので、長く保険料を納めたから損をするという訳でもないでしょう。

遺族給付って何?

遺族基礎年金と遺族厚生年金は、会社員であれば、どちらも加入しています。
遺族基礎年金は子どものため、遺族厚生年金は配偶者のための年金制度です。

 

遺族給付はいくらもらえるのか、実際にシミュレーションをしてみましょう。
▼シミュレーション2:遺族給付はいくらもらえる?

先ほどの家族に再登場いただきました。もし男性が30歳のときに亡くなってしまったら、どうなるのでしょうか。

シミュレーション期間は30歳女性の平均余命が57.77年なので、配偶者が87歳までです(出典:厚生労働省平成30年簡易生命表の概況)。

子どもが18歳になる年の末日(高校を卒業するまで)期間は、遺族基礎年金が受給できます。
遺族基礎年金の受給期間が終了した後は、妻が自分の老齢基礎年金を受給できるようになるまで、中高齢寡婦加算という手当が加算されます(妻の年齢要件あり)。

シミュレーションでは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の累計で5,700万円弱の受給ができます。
子どもの養育費と配偶者の終身まで生活保障をしてくれる、とても手厚い収入保障保険に加入していると考えれば、そんなに高くない保険料ではないでしょうか。

民間の収入保障保険でも、配偶者の生活を終身で保障し、子どもが小さい期間はより、手厚い保障が得られる保険商品はないでしょう。

民間保険会社の年金商品で保障は得られないの?

それでは、民間保険会社の年金商品で保障は得られないのでしょうか。ここでは、厚生年金保険と民間保険会社の年金商品を比較してみましょう。

個人年金保険の場合を見てみましょう。保険料支払い期間中に死亡した場合、保険金は今まで支払い積み立ててきた金額に相当する金額が支払われます。つまり、個人年金保険は貯蓄の側面が強い商品なので、加入直後に亡くなってしまった場合の保障は手薄になってしまいます。

今回シミュレーションに用いた個人年金保険には、「最低保証期間10年」がついており、これは年金受取期間が始まってすぐに亡くなってしまった場合でも、10年間は年金受取ができるというものです。

個人年金保険にあって、厚生年金にはないメリットですが、厚生年金では遺族がいれば、遺族年金という形で遺族の生活保障がなされますので、個人年金保険の大きな魅力にはならないでしょう。

対して、年収400万円の人のひと月あたりの厚生年金保険料が約3万円ということを考えると、厚生年金の保障は魅力に感じませんか?

公的年金は「保険」として優秀

公的年金の障害給付・遺族給付について説明しました。
老後のためだけに支払っているのではなく、別の側面で年金のお世話になるかもしれないということがご理解いただけましたでしょうか。

公的年金の保障内容を理解することで、民間の保険が必要なのか不要なのかというのも見えてきます。

不要な保険に加入してしまうと、せっかく払っている厚生年金保険料を無駄にすることになります。

保険は長期間・高額の買い物になりかねないので、正しい知識を身につけ、上手にお金と付き合っていきましょう。

この記事を執筆したのは……

木村 拓人

株式会社MILIZE所属のAFP®(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅建合格者。